~セルシオ前編~静けさという衝撃
この車に乗ったとき、教習所の教官が「いい車なんてのはなあ。10mも動かせりゃあ、分かるもんよ」、なんて呟いていたのを思い出しました。
10mで分かる車なんてあるわけないだろ!?
完全に名前負けしちゃってるわ、このオジサンは(苦笑)。
そう軽く流してしまった庶民が自動車営業に携わるようになって、この“セルシオ”に乗ったときの衝撃は忘れられません。
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今でこそハイブリッド車によるエンジン回転数0からの発進に慣れた方も多くいらっしゃるでしょうが、2000年8月といえば、初代プリウスが売られていた(1997年~2003年)時代の真っ只中です。
ハイブリッド車なんて乗ったこともありませんでした。
セルを回したときに「フォーン」と唸ったあとの「シーン・・・」とした、あの空間は
「あれ?高級車なのに、いきなりエンスト?」
そう、疑うような静けさでした。
思えば、ハイブリッドのエンジンが回っていない音のない車内とは違い、粛々と静かに回るエンジン音は車内に入ってきていたのです。
何とも品のある“静けさ”でした。
それが分かったのは何度も運転するようになってから。
高級とは、こうあるべきなんだとセルシオに教えられたような気がしました。
高速道路で聞いたV8エンジンの、微かでまるで遠くで響いているような高い音は美しく、主張しないくせにやけに聴覚に訴えかけてきました。
どこからか語っても魅力あふれる車であることは間違いありません。
僕の父が破産前に最後の贅沢として所有していた車ですので、思いも一入です。
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280馬力規制が解かれる(2004年6月規制解除)直前の車だけあって、カタログ上は280馬力ですが、パワー系でも不足を感じる場面は全くないです。
運転手付で乗る車でもありますので、Dレンジに入れたままアクセルを踏んでも、柔らかい加速しかしてくれないのは仕方ないです。
そういう場合は2速あたりに入れてみたら驚きの加速力を味わえます。
まあ、それでも品の良いこと・・・。
決してドカンと出ることはないです。
でも、たぶん大方のスポーツカーより速いでしょう。
速いのは当たり前として、セルシオの良さは何といっても、その乗り心地です。