「クラウン」12代目 180系 ‘ゼロクラウン’ 2003年-2008年

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飛ぶように売れた間違いのない一台

“ゼロクラウン”。

もしかすると歴代クラウンのフルモデルチェンジの中で最も衝撃的かつ好意的に受け止められた商品かも知れません。

 



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これまでクラウンらしいと思われてきた、ややスクエアな型から決別し、新しいクラウンらしさを、まず外観で表現していました。

今でこそ、見慣れ、そして少しずつ街中で見かける台数も減っているゼロクラウンですが、あの洗練されて嫌味のないデザイン、かつどの車にも似ていない形は我々販売する側にとって一番の好条件でした。

人気車種がモデルチェンジをするときは、事前情報を集める中でかなり不安になることも多いのですが、このゼロクラウンほど「これは売れてくれる!」と自信を持って営業をできた車は数少ないです。

新開発のNプラットフォームもまた新しいクラウンを演出するのに一役買ったのは言うまでもありません。

先代「170系クラウン」と比較すると剛性の違いは少し走らせただけで、誰でも分かってしまったでしょう。

それは、柔らかな乗り心地を提供してきたクラウンを捨てることでもありました。

正直なところ、低速走行~時速50kmまでなら助手席・後部座席の方には先代170系のほうが楽に感じるかと思います。

ゼロクラウンに低速での乗り心地の良さは正直、ありません。

その代わり、高速道路での安定感はこれまでのクラウンとは一線を画すレベル。

エンジンが歴代クラウンに搭載してきた直列6気筒からV型6気筒へ変更されたのはトピックでした。

とにかく踏めば軽く、エンジンが回転しているのが分かるので、ついつい踏み込んでしまった方も多かったのではないでしょうか。

これまでの直列6気筒は中速トルクは充実していましたが、どうしても立ち上がり、つまり走り始めに“モッサリ感”が付きまとっていたものです。

「ああ。今、大きく重い車を動かせている」からの変貌

170系までの、それは重厚感につながりますが、走りたい欲求を刺激するものではないのもまた事実。

2003年に新しく搭載されたV型エンジンは、ゼロクラウンを快適に発進させ、ストレスなく初速~中速域に身を委ねるのを得意とします。

中速~高速は、回転数が上がるため、以前の直列エンジンより、トルク面でやや劣るようにも感じますが、その代わり、‘回す楽しさ’も付随してくるため、運転していて不満とも思いませんでした。

静粛性を突き詰めた時代はゼロクラウンで変わろうとしていました。

 



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エンジン音自体を多少、聞かせるようなセッティングにしていたのでしょうか。

直列にはない高めの回転音が車内に入ってくるのも、これまでにない感覚でした。

しかし、アイドリング時も、エンジン音が車内にそこそこ入ってくるのは遮音を良しとする法人ユーザーや、車内で音楽を聞くことに重点を置いた方には、(あくまでクラウンとしては)やや不向きだったことも付け加えておかなければいけません。

大きな変更点はハンドリングにも及びます。

これまでのアンダーステア傾向が強いクラウンからも決別を図りました。

角度のあるカーブを曲がるときには先代170系と比較するとハンドルの回転量が明らかに違うので笑ってしまうほどです。

これがアスリートモデルになると、さらに顕著になるので、さながらスポーツカーのような刺激的なフィーリング。

マイナーチェンジを折に追加された3,500ccのモデルの加速力と合わせれば、それはもう「クラウン」ではありませんでした。

サスペンションもかなり硬め(ロイヤルとて決して柔らかくはない)に仕上がっていたため、既存のユーザー様は驚いて敬遠したケースもあったほど。

そんなこともあり、販売台数はまだまだアスリートよりロイヤルのほうが上回っていました。

次モデルの200系「クラウン」(190系クラウンは存在しません)アスリートは乗り味が相当にマイルドになっていたので、多少“やりすぎ”を認めたのだと思います。

しかし、もはやスパルタンと言っても過言ではない「クラウン」アスリートは、このゼロクラウン一世代だけの希少価値。
中古車をお考えの方には、魅力的な選択肢になるでしょう。

タイミングベルトも、この代から交換不要のタイミングチェーンに変更され、電気系の故障も少ないですから発売から約15年経過した商品とはいえ、ロイヤルと併せて、まだまだお薦めです。

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