「クラウンマジェスタ」6代目 S210系 2013年-2018年 前編

210系「クラウンロイヤル」とは別物

2018年2月、6月に控えたクラウンのフルモデルチェンジを前にひっそりと幕を閉じた「クラウンマジェスタ」。
おそらく、もう「マジェスタ」という名は消えてゆくのみでしょう・・・。

この試乗記は最終限定モデル‘J-フロンティア’が発売されている頃に、ようやく買取させていただけたS210系「クラウンマジェスタ」に乗ったときのものです。

これまでの「マジェスタ」は、独自デザインだったため、ややもすると「クラウン」ロイヤルより格下に見られがちでした。

210系「マジェスタ」は、車好きの方が見ないと普通の「クラウン」と違いが分からないレベルに纏められているのに驚きます。

意地悪くいえばコスト削減とも言えましょうが、乗ってみれば別物だということが‘すぐ’に分かります。

 



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内装の質然り、走り然り

内装については高品質に見せる技術が素晴らしいロイヤルに対して、本木目を使うするなど一味違う高級の在り方を提示しています。

ただ、先代まではセンターコンソールも本木目だったのに対し、210系は高度な熱転写を利用した本木目調。
本物志向のユーザーには残念な点です。

走りについては、非常に落ち着いたものがあります。

比較したい車種に、同時期に発売された210系「クラウンロイヤル」を挙げられる方も多いのではないでしょうか?

しかし、いずれも候補に入れられるほどの財力をお持ちなら、僕は迷わず「マジェスタ」をお薦めいたします。

たしかに、ロイヤルの23.2km/L(街中実燃費でも16km/L程度)という燃費は素晴らしく、これだけでも選択に値すると思います。

しかしながら、以下の2点から僕は210系「クラウンロイヤル」は手放しで‘買い’だとお客様にお伝えしていません。

・4気筒エンジンの音に雑味があること。振動もやや大きい。

・モーター⇔エンジンの切り替えが多く、スピードとエンジン回転数の不一致が起きること。

音質が悪いといっても、静粛性の高い「クラウン」ですから、そうそう音が侵入してくるわけではありませんし、ハイブリッドですからタコメーターとスピードに多少の不一致があっても仕方ありません。

210系「ロイヤル」はとにかく低燃費を、というコンセプトで開発されたので走りにおいては諸々、妥協せざるを得ない点が出たのでしょう。

しかし、「クラウン」という冠に期待するスムースさに欠け、かつ価格もハイブリッドだと込み込み500万円以上というのは少々、納得がいきません。

その代わり、といっては何ですが、2,500cc V6のノンハイブリッド=ガソリンモデルは、JC08モードが11.4km/Lながら、すばらしくスムースな出来映えです。

解消されたネガ

210系「マジェスタ」は、上に挙げた不満を解消したモデルと言えます。

エンジンが直列4気筒2,500ccではなく、V型6気筒3,500ccとすることによりエンジン音、振動のネガは完全解消しています。

車内に入ってくるエンジン音に‘聞きとれる’ことすらあるのではないでしょうか。

この3,500ccエンジンは210系「アスリート」のノンハイブリッドモデルに搭載されているものと同型。
単独でスポーツモデルに搭載できるほどですから、パワー不足とも無縁です。

「マジェスタ」に関しては、カタログ燃費だけを‘売り’にする必要がないのも、走りを充実させられた要因となりましょう。

210系「クラウンロイヤル」は高燃費を狙うがために、可能な限りモーター走行を行なおうとしてしまい、それが故、やや不自然な走りになっている点は否めません。

対する210系「マジェスタ」はスタートこそモーター走行に委ねるものの、基本はエンジンを補助する役割を担って低燃費(JC08モード:18.2km)を目指しています。

そうすることにより、エンジン回転数とスピードが比例するため、ハイブリッドの違和感が最小限に留められ、より自然な走りを得られた、というわけです。

5代目と6代目は比較対象にならないのか?

先代にあたる5代目「マジェスタ」は4,600ccV8、ノンハイブリッドでしたので、6代目「マジェスタ」と車として比較するのは何か違うような気がします。

正直、申し上げて、5代目に詰まれた4,600ccV8エンジンは世界最高レベルですから、エンジン音やスムースさだけを取り上げると6代目とて一歩譲ります。

ただ、5代目200系「マジェスタ」は、カタログ燃費ですら、9.4km/L。
街中の実燃費で5km/L強ですから、実燃費で2.5倍ほども差が出ます。

ガソリン代うんぬんではなく、これだけ環境問題が提起されている中で、同車種次期モデルの燃費を2.5倍に引きあげたのはトヨタの英断という他ありません。

走りに対する考え方も5代目と6代目で随分、異なります。

5代目「マジェスタ」が発売された2009年当時、開発チーフが

『マジェスタはご自分で運転なさるお客様が意外にも70%いらっしゃるとのデータを獲得したので、ドライバーズカーとしてご満足いただけるようセッティングした』
という発言がありました。

実際、ステアリングもしっかりした手ごたえがあり、アクセルレスポンスも良く、正に‘スポーティサルーン’でした。

これに対して6代目の趣はずいぶん、違います。

ステアリングフィールは最小限。
アクセルレスポンスも控えめで、踏み心地も柔らかく、いかにも‘ショーファーカー’です。

ただ、2代目「センチュリー」のように、どのような運転をしても緩やかにしか動いてくれないわけではないのが「マジェスタ」の特徴でしょう。

ステアリングは決してアンダーではないですし、アクセルも使いようによっては‘暴走’も可能。

お客様を乗せるときには‘ショーファードリブン’として、
ご自分だけのときは繊細なタッチでスピードを追求できる、そんな贅沢な商品に仕上がっていると思います。

 



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それだけに、4名仕様が最後まで設定されなかったのは残念でした。

ちなみに、後部座席の乗り心地だけなら、5代目と6代目、甲乙付けがたいところです。

5代目は峠道でも横揺れを感じないのが特徴。
6代目は直進時に特化した快適性を得ています。

>>>つづく

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