初代カローラ、夢のマイカー
日産がトヨタを本気で脅かしている1966年、半世紀前の出来事。
実用主義に徹しすぎた800ccの“バブリカ”が、いまいち振るわなかったトヨタは、高速道路が整備されつつあることも鑑み、1,000ccの“カローラ”の開発を決定しました。
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カローラ=『花の冠』。この車名は女性(殊に主婦層)に強く訴えかけたに違いありません。
財布の紐は奥様が握っていることを、当時からトヨタは知っていたのでしょうか。
『もはや戦後ではない』と言われて、早10年。
後期高度成長期の始まりの年。
カローラは少し贅沢が欲しくなってきた一般庶民へ向けたマイカーとして順調に開発が進められました。
ところが、開発も終盤に差し掛かるころ、発売まで8ヵ月というときに、ある情報が入ります。
日産が1,000ccのファミリーカーを発売する、と。
車名は日産初の公募により決まった“サニー”です。
848万通超という応募数自体、それだけ国民が車に夢を見ていた時代だったのだな、と思わされます。
ちなみに応募者数が一番、多かった車名は“フレンド”。なんと7万通もあったそうです。
サニーと書いた応募者は計3,279名。
そのうち、当選者は10名。
1名に新車一台+500,000円が進呈され、9名には新車一台が送られました。
同系車種を開発しているという話自体は、トヨタ側も知っていましたが850cc~900ccで、まさか1,000ccとは思わなかったと聞きます。しかも発売時期はサニーのほうが一足早い。
このままカローラを出すわけにはいきません。そこで『大きいことはいいことだ』の時代、思い切って1,100cc(諸元表では1,077cc)として発売することにしたのです。
さらに広告の重要性を最もよく知るトヨタはCMでサニーに真っ向勝負を仕掛けます。
コマーシャルは、静かに佇むカローラのショットで始まります。
画面下に次々に表われる性能面のアピール。
・排気量:1,100cc
・最高出力:60ps
・最高速度:140km/h
・4段フロアシフト(フロアシフトはまだまだ高級車にしか搭載されていない時代です)
・5人乗り
いつしか、サーキットを疾走するカローラに画面は切り替わっています。
そしてCMの終盤のナレーションが、とてつもない印象を残します。
1000+100
「+100ccの余裕!この余裕がカローラの良さを決定づけました!」
サニーより大きなエンジン積んでいます、と規制上、言ってないだけで言ってるじゃん!
みんな、そう思ったそうです(笑)。
でも、やっぱり大きいほうを買ってしまうのが時代というもので・・・。
喧嘩を売られた日産も負けじと、エンジンを1,200ccに拡大した2代目サニーのCMで
「隣の車が小さくみえます」とやり返しましたが、それは4年後のこと。
時は既に遅く、大衆車は“カローラ”というイメージが国民に根付いた頃でした。
価格はどうだったのでしょう?
日産サニー | スタンダード410,000円 デラックス460,000円 |
トヨタカローラ | スタンダード432,000円 スペシャル475,000円 デラックス498,000円 |
このへんの価格設定も今のトヨタに通じる後発ならではの憎さがあります。
+22,000円で、+100ccに乗れますよ、というのも謳い文句だったそうです。
今でいうと200,000円相当以上です。
1966年、大学初任給25,000円、映画200円、はがき7円、かけそば60円 etc…。
当時、車に対する国民の思いは現在とは比較にならなかったのが伺えます。
実現したくなる夢を作ってくれた”カローラ”みたいな車を国民は待っていますし、また我々も夢を持てる人であり続けたいですね。
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11代目現行カローラの試乗記は>>>こちら
○大きさ比較○
全長3,855mm 全幅1,485mm 全高1,380mm ホイールベース2,285mm(初代)
全長4,400mm 全幅1,695mm 全高1,460mm ホイールベース2,600mm(11代目)