「クラウンマジェスタ」5代目 S200系 2009-2013年

「セルシオ」の後継は「LS」ではない

「セルシオ」の後継といえば、レクサス「LS」だとお思いの方が多いのではないでしょうか?

海外では「セルシオ」は長らく「LS」として販売されていたのは事実です。

しかし「LS460」(4代目 2006年-2017年)に乗ってみれば思うのは

『これは、違う』

誤解なきよう先に申し上げますが、「LS460」は素晴らしい車です。
1,875mmという車幅は、国内では難はあるものの、海外では特に気にするほどの数値でもなかったでしょう。

 



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2006年は、立体駐車場(横幅1,850mm制限が多い)をご利用していた3代目「セルシオ」(車幅1,830mm)のオーナー様にとって「LS」(車幅1,875mm)への買い替えが難しかったため、「セルシオ」の質の良い中古車が高値をキープしていました。

僕たちは横浜に「セルシオ」ばかり入札しに行ったものです。

5代目「マジェスタ」こそ

180系4代目「マジェスタ」も価格相応の商品ではありました。

しかし、「セルシオ」より小ぶりなボディでは「セルシオ」以上を実現するのはなかなか難しかったようです。

もっとも、4代目「マジェスタ」が発売された2004年当時はまだモデル末期の3代目「セルシオ」が販売されていましたから、機能面などで上回るわけにいかず、制約が多かったと聞きます。

それに対して、この5代目「マジェスタ」は2006年に消えた「セルシオ」に遠慮する必要はありませんでした。

車幅1,810mm、全長4,995mmとボディサイズは拡大し、価格もCタイプで、6,950,000円。

同じCタイプで比較すると、4代目登場時は6,090,000円でしたから、相当な値上がりを敢行したと言えます。

それもそのはず、実際、乗ってみると、この5代目は4代目と較べて、一つ格上の車種だということが誰しも分かると思います。

エンジンは2006年に「LS460」に採用された4,600cc V8エンジン。

「LS460」は「LS600h」というラグジュアリーに特化した商品がレクサスに存在していたため、実はかなりスポーティ寄りでした。

それが、「セルシオ」後継ではないと感じる最大の点です。

エンジン音は、やや低く設定されており、アメリカンスポーツを思わせる雰囲気すらあります。

新型「セルシオ」と呼べる仕上がり

相当、スポーティ寄りな「LS460」と違い、ゆったりと乗れる商品を目指して開発されたのが、この5代目「マジェスタ」です。

たしかに30系「セルシオ」に似てはいますが、ステアリングは‘しっかりした感触’を得、切り始めの遊びも少なくなっていることで運転のし易さが増しています。

また、急ハンドルを切ったときにリアが流れる感覚が消えていることから明らかにボディ剛性が上がっているのが分かります。

4代目「セルシオ」と呼んでも誰もが納得する商品でした。

そして、静けさ。

「セルシオ」といえば、静粛性の高さではライバルを凌駕していました。
5代目「マジェスタ」は、これに磨きをかけています。

この「マジェスタ」は、静けさに加えてエンジンの吹き上がりが‘さらに’滑らかになっているのが特徴です。

ATが8速に進化したこともあるでしょう。
30系「セルシオ」は前期は5速AT、マイナーチェンジされた後期でも、6速ATでした。

8速の「マジェスタ」は、特に低速のシフトチェンジが恐ろしくスムースなので、大排気量エンジンにありがちな低速でのトルク不足を全く感じさせないまま加速していきます。

日常域である40km/h~60km/hは基本、無音。

風切り音も、コントロールされており、やたらと静かな車内です。

ロードノイズが、わずかに入ってくるばかりというレベルに仕上がっています。

これだけの静粛性を得るために2008年に発売されていた、200系「クラウン」から、さらに吸音材を見直しています。

わずかにでも空洞ができた箇所には発砲素材で空気振動を抑える配慮も為されています。

リアガラスは「クラウン」の、3.5mmから4mmへ、サイドガラスは4mmから5mmへ変更。

ドアトリムの吸音材に至っては6mmから10mmと、実に4mmも厚くなっていることには驚きました。

その他、全グレード標準装備のエアサスの空気量を増加させつつ乗り心地に芯を持たせる技術など、静粛性に対する創意工夫は枚挙に暇がありません。

 

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Aタイプ‘Lパッケージ’とは?

この「クラウンマジェスタ」にはAタイプという少々、変わったグレードが存在していました。

いわゆるベースグレードに該当するのですが、そのAタイプの‘Lパッケージ’にしか装備されていないシステムがあったのです。

それは<アクティブステアリング統合制御>

ハンドリングが少々、過敏になるので、この商品をお買い求めになるような方々に好評を博したとは思えませんが、面白い試みでした。

また、Aタイプ‘Lパッケージ’には特製のボルドーの本革シートが奢られます。
他グレードでは選べない上、艶のある色合いだったので魅力的に映りました。

その代わり、オプションでもリアエアコンやリアプリクラッシュセーフティなどの後部座席に対する装備は選択できないという・・・。

フロントドア・リアドアのイージークローザーすらオプション選択できませんでした。

そのくせ、標準でサンルーフが付いてくるのは、ちょっと意味不明でした。

次ページは>>>
「当たり前ですが欠点は燃費。
しかし、走りは、珠玉」

ハイオク。実燃費もまた悪い。

この「マジェスタ」の難点を挙げるなら、4,600ccのV8による燃費の悪さでしょう。

200系「クラウンアスリート」の1,590kgに対し、1,770kg(Cタイプ)と重量が増したことも多少は影響しているかも知れません。

ちなみに、カタログ燃費は、9.1km/L。
それも10.15モードで、です。
JC08モードでは8km台前半でしょう。
 



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これでは時代にそぐわないということで、2013年からの210系「クラウンマジェスタ」は、V6 3.5L+モーターのハイブリッドでJC08モードで18.2km/Lという数値を得ています。

実際、この5代目、S200系「マジェスタ」を、街中をゆっくり走らせようものなら5km/Lを少し越えるくらいでした。

それでも、4,300ccの「セルシオ」よりは約10%近く向上しているので、排気量アップと併せて考えると進化といえば進化です。

ガソリンの減り具合で体感はできませんでしたが・・・。

ただし、高速走行時の燃費は10km/Lを越えます。
うまくエコドライブに努めれば13km/Lくらいいくのではないでしょうか。
このへんは、さすが、という数値でした。

燃費の悪さはともかく、自動車税の徴収額が大きすぎるのは、この商品を中古でお買い求めになろうかというお客様の大きな壁になるでしょう。

なんと、年間88,000円(4,501cc~6,000cc枠)。

30系「セルシオ」の年間76,500円(4,001cc~4,500cc枠)も『・・・』レベルですが、88,000円は、もはやスーパーカー並み。

そう。
エアサスの故障すら少ないし、奥様にも喜ばれるスーパーカーと思えば、安いものです。

GタイプFパッケージという選択

4人乗り仕様が設定されていた200系「マジェスタ」。

7,400,000円~Gタイプでも大概のおもてなし機能は付いていますが、Fパッケージはそれより500,000円も高い7,900,000円~の設定。

以下がFパケの特別仕様です。

・左後席のオットマン付シート
・後席シートエアコン
※シートから冷暖房の風。特に夏場は気持ちいいです。
・後席中央部にエアバック
・後席収納テーブル

完全に後席のおもてなし仕様モデルです。

しかしFパッケージを選ぶデメリットも存在します。

・プレミアムサウンドが後席専用にチューニング

助手席の肩部分のスピーカーが装備されていません。

・助手席アクティブヘッドレスト未装備

衝突が避けられないと車が判断したとき鞭打ち予防のためにヘッドレストが前方に飛び出してくれる機能が助手席にありません。

・助手席快適温熱シートの廃止

これら3点はGパッケージには付いています。

つまり普段、お子様と奥様は後席でゆっくり、たまには奥様と二人でデート、なんていうシチュエーションに助手席は応えてくれません。

あと後席のアームレストならぬセンターコンソールが常に出ているため、右から乗り込んで左の席へ…というような動きが大変、取りにくいです。

中古車価格も新車の50万円ほどではないですが、希少性からか高額設定されていることが多いです。

2018年12月時点、5万キロ走行車でGパケ140万円~、GパケFパッケージ170万円~くらいが目安です。

最高のエンジン音

最後に、この車の白眉をご紹介しましょう。

それは高速域への加速時です。

Dレンジのまま踏み込むと、後席への配慮からか爆発的な加速はいたしません。
‘それ’を期待するのなら、是非ともシフトチェンジして、お楽しみください。

いずれにせよ、最高に美しく、整った、エンジン音が、ドライバーの耳に届くでしょう。

これを幸せといわずして何という・・・とか思いながら、オーナー様を羨みつつ、納車しています。

下に当時の価格表、諸元表もございますので、よかったらご覧ください。

 

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○関連記事ご紹介

210系・3,500cc+モーターは
極上4,600ccと対等に
なれたのか?については
>>>こちら

 

 

この静粛性は衝撃的でした。
30系「セルシオ」の試乗記は
>>>こちら

 

同じエンジンを積んだ「GS460」
の味付けは?「GS430」と併せて
のレビューです。
>>>こちら

 

その次の「GS450h」の試乗評価も
よろしければ、どうぞ
>>>こちら

 

V6とはいえ、モーターの力がおかしい?!
唯一の暴走クラウン。ハイブリッドモデルの
試乗記は
>>>こちら

 

 

○S200系「クラウン・マジェスタ」評価表○
≪非常に良い・良い・普通・悪い・非常に悪いの5段階で評価しています≫

価格対評価 非常に良い
運転楽しい度 非常に良い
後席居住性 非常に良い+α
リセール価値 悪い
故障のしにくさ 良い
部品の安さ 悪い

5代目「クラウンマジェスタ」200系後期 税込価格表
Aタイプ6,120,000円
Aタイプ Lパッケージ6,870,000円
i-four(4WD 6AT 4,292cc)6,920,000円
Cタイプ6,970,000円
Gタイプ7,420,000円
Gタイプ Fパッケージ7,920,000円

5代目「クラウンマジェスタ」200系 主要諸元表(2WD)
全長4,995mm
全幅1,810mm
全高1,475mm
ホイールベース2,925mm
最小回転半径5.3m
車両重量1,750kg~1,820kg
乗車定員4名~5名
エンジン種類V型8気筒DOHC
トランスミッション8 Super ECT
総排気量4,608cc
エンジン最高出力255kW[347PS]/6,400r.p.m
エンジン最大トルク460N.m(46.9kgf-m)/4,100r.p.m
使用燃料無鉛プレミアムガソリン
JC08モード9.1km/L~9.4km/L
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