ランボルギーニ「カウンタック」1971年~90年

スーパーカーブームの立役者

時折、入庫していた「ランボルギーニ カウンタック」。

いつからかめっきり入ってこなくなりました。

それもそのはず、スーパーカーブームの主役だったカウンタックは21世紀に入っても人気は衰えるどころか中古車価格は高騰し続けています。

入庫するなり売れるのが当然の昨今。

と、いうか店長の知り合いが「入ったら連絡してよ、絶対!」と、頼んでいるようです。
本当にすぐ売れます。

「ミウラ」のようなな高騰を期待して資産としてご購入する方もいらっしゃるようです。

じきに、そんな日もくるでしょう。年々、超希少車種になりつつありますから。

ちなみに、この「カウンタック」という呼び名は飽くまで英語読みで、本当は「クンタッチ」と発音するそうです。

イタリア語で「おー、スゴイ!」という意味だとか。

 



スポンサーリンク

 

 

しかし、この車、いろいろ規格外すぎて何を書いていいのか迷います。

乗り心地なんて良いわけもないし、静粛性とは真逆の方向性。

夜中でなくても、ご近所迷惑な“超絶爆音”を出しっぱなしです。

そんな庶民目線からしても、スタイリングには特有の、まさに独特の美が発散しているのは認めざるを得なかったものです。

フェラーリの「ディーノ」や「トヨタ2000GT」みたいな流麗さとは明らかに異なる、直線で構成された突拍子もない恰好よさです。

このデザインの変化が近年の「ムルシェラゴ」や「アヴェンタドール」なわけですから、1971年当時、どれだけ度肝を抜くデザインだったのか計り知れません。

そもそも、なぜ、しがない営業マンがカウンタックを運転しなければならなくなったのかと申しますと、もちろん納車の際です。

冷や汗止まらない納車話、しばしお付き合いください。

こういう超高級車は店頭にいらしてもらうのが店としてはありがたいのですが、なかなか、そうはいきません。

弊社の場合、元レーサー(自称?)の販売員がおりまして、当然ながら僕より腕前は上ですので『ランボルギーニは彼が納車してくれるだろう』と、高を括っていました。

それが、カウンタックの納車日にゴルフの打ちっぱなしで小指を骨折したそうなのです。
なんでまた、こんな日に骨折・・・。

そういえば最近「マーチ運転しても手、痛いっすよねえ」とか言ってたっけ。
じゃあ、打ちっぱなしなんか行くなよ、と。

代役は僕しかいないので、どうしようもありません。

社長も「まあ、保険入ってるしな」と、一度は言いつつ、「ゆっくりな」とか「慎重に」とか出発前の5分で十数回、呪文みたいに唱えてくるので、聞いている僕が怖くなりました。

40,000,000円(四千万円)で売れたのですから無理もありません。

毎回、クラッチを切って、キーを半分捻って少しずつエンジンにガソリンを入れるという儀式が必要な為、エンジンは整備担当者にかけて貰いました。

「じゃあ行ってまいります!」と、敬礼しそうなくらいの気合を入れて出発しようとしたものの数メートル先のローレル(売り物)が邪魔になってうまく出られないのです。

「こいつ、曲がらないぞ・・・」
嫌な予感がしたものの行くしかありません。

次ページ>>>
「300km/h 夢の続き」です。

あの頃見た、300km/hの夢

店先まで整備担当に移動してもらい、あらためていざ出陣です。

正直、店長の呪文顔をこれ以上、見たくないので兎に角、気合で出発しましたが、すぐに気が付いたことがあります。

クラッチが、ものすごく硬い。

それはそれは、左にただの硬い石が置いてあるようです。

一回、一回、「ぬ!」と変な呻き声を上げて、ゆっくりゆっくり走らせていました。

何となく街の人の視線も感じます。(ああ。優越感ってこういうものか)と、般若顔の僕にも一瞬、笑みが浮かびました。

しかし、すぐに悪夢の信号待ち。
そして「ぬ!」。

それでもダメなときがあります。「こ・・・ぬ!!」出す声を変えれば、うまくいったりするから不思議です。

とにかく気合で進行。

高速道路にさえ入ってしまえば・・・なんとか・・・。

すみません。
またダメ出しです。

この車、スピードをある程度、出しても、あまり曲がりません。ハンドルもえらく硬いです。

何かコツがあるのかと思いましたが、コツもないです。

もうちょっと大きなハンドル付けてくれれば・・・などと軟弱者の要求をしてしまいそうです。

意外な発見は段差は案外、乗り越えるのだということ。

当時のポルシェ、フェラーリより遥かに硬いサスペンションのおかげでかなりの急勾配でもゆっくり走れば何とかなりました。

ここは現代のランボルギーニは車高調が付けたりして対策していますけれども「カウンタック」はハイテク要らず。

まあ、それくらい硬いわけです・・・。
カッチカチです。

バックはする機会がありませんでしたが、バック駐車は、かなりの腕前の方が慣れない限り、不可能とも思われました。

リアガラスはただの〔小窓〕
後方視界なんて、見えにくい「プリウス」となんか、比較にもなりません。

なぜなら、見えないんですから。

あとで聞いたところによると、《ドアを開けて(上げて?)身を乗り出して、右手でハンドルを操作しながらバックする》のが基本だそうです。

あの石クラッチを操作しながら曲芸をするとは、考えただけで頭痛がします。

数々の駄目出しを書いて参りましたが、期待した高速道路は、やはり、良かったです。

タイヤが分厚いせいもあって安定感があり、当時、謳われた300km/hを出している錯覚にとらわれながら、ほんの少しの時間だけタイムスリップしたような気分でした。

みなさんのご想像どおり、エンジンの爆音、凄まじいです。
空中分解しそうなヒヤヒヤ感もあります。

しかし、当時「カウンタックのアクセルを全開にした人たちはそのまま21世紀の未来に繋がっているような何だか格別の高揚を見たに違いありません。

近代ランボルギーニにはない底知れぬ何かが渦巻いている感じでした。

けっして大げさではなくて、僕は、70年代、80年代の人たちが描いた夢の続きを見たような気がしました。

現在の、車が本当に400km/h超えしたとしても、ランボルギーニ“カウンタック”の夢の300km/hを超えることはできないと思います。

フェラーリ512BBと、最高速対決をしていた、あの頃。

それが自動車雑誌に特集されて、少年たちはどれだけ心躍らせたでしょうか。

この車は、それもこれも、全部、ひっくるめて、「カウンタック」なのでしょう。

理屈どうこうではなく、コックピットに座って、運転していることこそが幸せだと思える数少ない本当の“スーパーカー”でした。

下に主要諸元表もございます。
よかったらご覧ください。

 

スポンサーリンク



 

 

○ランボルギーニ「カウンタック」評価表○
≪非常に良い・良い・普通・悪い・非常に悪いの5段階で評価しています≫

価格対評価 評価不能
運転楽しい度 非常に良い
後席居住性 無し
リセール価値 非常に良い+α
故障のしにくさ 非常に悪い+α
部品の安さ 非常に悪い+α

LP400主要諸元表(1974年)
全長4,140 mm
全幅1,890 mm
全高1,070 mm
ホイールベース2,450 mm
エンジン種類V12気筒DOHC
総排気量3,929 cc
トランスミッション5MT
最高出力375 PS/8,000 rpm
最大トルク36.8 kgm/5,500 rpm
車両重量1,065 kg(実際は≒1,300kg)
乗車定員2名
生産台数150台
使用燃料無鉛ハイオクガソリン
実燃費2km~3km/L
価格16,800,000円~(1ドル274円~305円)

アニバーサリー主要諸元表(1988年)
全長4,200 mm
全幅2,000 mm
全高1,070 mm
ホイールベース2,500 mm
エンジン種類V12気筒DOHC
総排気量5,167 cc
トランスミッション5MT
最高出力455 PS/7,000 rpm
最大トルク51.0 kgm/5,200 rpm
車両重量1,680 kg
乗車定員2名
生産台数657台
使用燃料無鉛ハイオクガソリン
実燃費2km~3km/L
価格27,000,000円~(1ドル121円~136円)

※上記諸元表は複数の資料から正確であると思われる数値を記載いたしました。車両重量など公式発表と実際の数値が大きく異なる場合があるようですので、何卒、ご了承くださいませ。

arukidapon: